インタビュー
ISSUE【ヘアドネーションタオル製作 episode.2】 ダイワタオル協同組合 北川顧問インタビュー
ヘアドネーションタオルは、JHD&Cと泉州タオルの老舗メーカーであるツバメタオル株式会社がコラボレーションして製作した、ウィッグケアに適した吸水性とサイズのタオル。
インタビューepisode.2では染工場(せんこうじょう)ダイワタオル協同組合の北川顧問にタオル作りの奥深さや繊維業界のエシカル、サスティナビリティについて伺いました。
奥が深いタオル作りと工程管理
-
ダイワタオル協同組合 北川顧問(以下、北川):
染工場(せんこうじょう)に来られるのは初めてですか?
-
JHD&C代表 渡辺(以下、渡辺:
はい、初めて見る・知ることばかりですし、とても興味深くて!いやもう、本当に楽しかったです!
-
北川:
我々が取り扱っている商品は、一見同じに見えても細かな仕様が全部違うから、ひとつとして同じ商品がないんですよ。ミニタオルからシーツまで毎日200種類くらいあって、それぞれに加工工程が違います。
日々36種類ほどの違う工程のタオルを作っているんですよ。少しでも工程が違うと商品の「顔」が違ってしまうので、工程管理が我々の仕事で最も神経を使いますね。
私も40数年この業界におりますけれども、ベテランと言われる職人でもいまだに分からないことがある。毎日使うタオルであってもそれくらい奥が深いんですよね。
タオルなんて拭けたらそれでいいっていう考え方もありますが、昨今クオリティが高くなってきていますので、ドライユース(乾いたタオルで濡れた髪や体を拭き取る使用法)か、ウェットユース(濡らしたタオルを使ってお風呂などで体を洗う使用法)かによって使い方も変わってきます。結構タオルって面白いんですよ。
-
渡辺:
これからは自分が使っているタオルのネームを確認してしまいますね!
-
北川:
このタオル使い心地ええなあ、どこ産やろってネームを見て、泉州産だったら嬉しいですね。
泉州ネーム
繊維業界のエシカル、サスティナビリティ
-
北川:
JHD&Cさんは、全くの慈善事業としてこの活動をしておられるんですか?
-
渡辺:
そうです、特定非営利活動法人として2020年9月で11年を迎えました。寄付された髪の毛だけで作ったウィッグを、必要とする子どもたちに無償提供しています。
-
北川:
実は、身内の女性が乳がんになって、抗がん剤治療※をしたことがあるんですよ。入院してすぐに説明受けたのが「かつら」のことで……その時は、治すことが先じゃないか、見た目のことなんて気にしなくていいと言ってしまったんです。
JHD&Cさんに活動のお話を伺って改めて、急に髪の毛が抜けたらショックを受けるのは当然だと再認識しまして、その時のことを思い出して胸が痛くなりました。その方は治療の甲斐あって、今は元気にされています。
NPOとしてそのサポートをしているというのはすごいことやと思います。
CHECK!
- ※抗がん剤治療
- 薬を用いてがん細胞を死滅させたり、がん細胞の増殖を抑えたりする薬物療法のうち、抗がん剤を用いる化学療法のこと。がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響が及びやすく、副作用が大きい傾向がある。主な副作用に、吐き気・嘔吐、脱毛、骨髄抑制などがある。
環境を守る浄水、排水設備
-
北川:
我々繊維業界も、エシカルとかサスティナビリティ※とか、単なるお金儲けだけじゃない取り組みが増えています。
CHECK!
- ※エシカル、サスティナビリティ
- エシカル(ethical)直訳すると「道徳・倫理」。法律で決まっているわけではないが、一般的に良心に基づく考え方や行動規範のこと。環境保全や社会貢献の意味で使うことが多い。
サスティナビリティ(sustainability)持続可能性。企業や事業体においては、事業活動を通じて環境・社会・経済に与える影響を考慮し、長期的な企業戦略を立てていく取組みと捉えられている。
ダイワタオルとしては、まだそんな意識が一般的ではなかった20年前に、ボイラー設備を重油からガスに切り替えて、大気汚染にできるだけ配慮した工場に設備更新しました。
水も、河川に廃水を流しますので生態系に影響を及ぼしたら絶対ダメなんです。当社の浄水施設はご覧になりましたか?
ダイワタオルでは生態系に影響を及ぼさない設備作りに力を入れている
-
渡辺:
はい、想像以上の規模で驚きました。もうタオル工場と言うよりは「浄水場」ですよね。
-
北川:
この設備はね、私が工場長だった時代に「これからは環境に配慮したものづくりでなければ生き残れない」という思いで導入した廃水設備なんですよ。
また当社では商品によって「有機精練※」という工程も採用していますが、これは天然の酵素の力を借りて精練する、ツバメタオルさんの特許技術です。これらは全て「環境に配慮した工程」なんです。
CHECK!
- ※有機精練
- 苛性ソーダを使わずに酵素と石けんなどを利用して仕上げる、体にも自然環境にも優しいタオルの作り方のこと。ツバメタオル独自のエコロジーな製造方法。
見えないところへの付加価値
-
北川:
同じタオルを晒す工程でも、温度を上げて化学薬品を使えば、見た目同じものはできるんですよ。大量生産で安く作ることはもちろん可能です。だけど、ただモノが売れたらいいって言う時代じゃないっていうことも痛感しています。
タオルの晒しというのは表からは見えない「黒子」のような隠れた作業なんですが、その過程も胸を張って謳うことができて、それを含めてユーザーに喜んでもらえる、大事な要素じゃないかなと思ってます。
天然の酵素の力で後晒を行う「有機精練」の様子
酵素が活発に活動できる温度を保った暖かい部屋の中で、酵素がのりを分解している
-
渡辺:
おっしゃる通り、ものづくりに対する姿勢というのは商品に表れますね。
-
北川:
当時ね、天然の酵素は高価だったんですよ。でもそれを使うことによって繊維を傷めない、化学薬品を使わないっていうのが実現するので、それでやろうと覚悟を決めて、もう30数年になりますけどね。見えないけれど付加価値のある加工工程だと思います。
ユーザーには見えないですし、わかりにくい部分ではあるんですが、我々としてはそうしたものを使ってもらいたいという思いがあるんです。
ダイワタオルが行っている環境に配慮した工法・製品の数々
-
渡辺:
今回のコラボレーションで生まれたヘアドネーションタオルは、これからウィッグと一緒にレシピエントにプレゼントしていく予定ですのでJHD&Cとしても自信を持っておすすめできるタオルが作れたことに感激しています。
ウィッグケアだけでなく、何年も髪の毛を伸ばしてくれているドナー(髪の寄付者)にとってもおすすめできます。ツバメタオルの谷社長のお話しにもあったのですが、環境面も含めて、このようないい製品にたどり着けたのは、繊維専門商社としての(株)ヤギさんの素材調達力、ツバメタオルさんの製造技術、ダイワさんの加工技術……全てが合致したからという実感です。
受け取った人たちの元気のもとになってくれたら嬉しいですね。
本日はご多忙のなか、本当にありがとうございました。
ダイワタオル、ツバメタオル、ヤギ、JHD&C記念撮影
取材協力:ダイワタオル協同組合
タオルと切っても切り離せない綿と農薬のこと、オーガニックと環境のこと、のりとバクテリアのことなどは【ヘアドネーションタオル製作episode.1】ツバメタオル株式会社 谷社長インタビューをご覧ください。
ツバメタオル株式会社とコラボしたヘアドネーションタオルは泉州タオルと呼ばれる種類のタオルです。ツバメタオルの機械設備と熟練の技による泉州タオル製造の工程、そして環境のための取り組みを、工場内部の写真を交えて詳しくご紹介しています!
- この記事をシェアする