座談会
ISSUE JHD&C×和歌山刑務所×和歌山市社会福祉協議会 白百合美容室 座談会-6
和歌山刑務所の受刑者によるボランティア参加と、JHD&Cのヘアドネーションが、どのようにつながったのか?それぞれの思いを座談会にて語りました。
仕事のやりがいについて
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渡辺:
最後に、皆さんがどんな時に仕事のやりがいを感じられるか、これからどうしていきたいのかについて聞かせてください。
やりがいについて語る岩橋さんと三木さん
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岩橋:
社協の業務内容は、社会福祉協議会という名前の通り福祉なんですが、福祉って幅が広くて、何をするのも全て福祉なんですね。私たちが普通にやっている業務がすなわち福祉なので、普通のことをあんまりアピールするのもどうかなあという気持ちがあって。そういう意味ではどうやって広報して知ってもらうかは課題ですね。そこに問題があった時、知らないと気づきようがないですが、気づけば自分なりのアクションができますから。
あと、本来教育と福祉は一番お金がかかることなんです。よくボランティアでできるじゃないかとか、お互いに助け合ったらお金がかからないだろうと言われるんですけど、すぐに何かの収益が上がるものではないけれども、長い目で見なければいけない分野だということへの理解も広めていきたいなと思っています。
仕事の中で、ここをこういうふうにしたいよねという目標に向かっていく仲間がいるということ、仲間がいたら難しいことでも乗り越えられそうだし、乗り越えなくても何かが残るような気がします。仲間がいれば笑顔になるし、泣くよりは笑っていたいなというか、みんなが笑顔になるためにはどうしたらいいのかを考えるのも社協の仕事だと思っています。
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三木:
私は正直な話、生活するために働かざるを得なくて、ただ単に生活のために働いていました。でも6年前にボランティアセンターに来て、やっぱり気づかせてもらえることが多いんですね。
例えば障害がある方でも、目の不自由な人には点字ブロックは必要ですが、車椅子の人には逆に障害になります。どの角度で見るかによって全然違うので、私自身勉強しながら仕事をしています。
ヘアドネーションにせよ、タオル帽子にせよ、何かをやり始めるまでは不安なんですけど、始まるとだんだん燃えてくるんです。こういう楽しい場に出会えて、それもすごく嬉しいんですよ。ボランティア精神を持って、これからもいろんなことをやって行けたらなって思います。
「どこまでできるかわからないけれど、続けていけたら」
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砂山:
私は刑務官の仕事をしながら美容師免許を取得しました。
受刑者に指導する際は、1人でも2人でもいいからきっかけを見つけて更生していってくれたらなという思いで指導しています。私に「美容師の免許を取得して私の後を引き継いでほしい」と言ってくれた先輩は、在勤中に病気で亡くなりました。亡くなる直前に1冊のノートを私にくれたんですけど、そこにはカットの基本など貴重な内容が書かれていました。
後を託され、今、美容の作業に関わることができてすごく充実しています。今年度から、集合訓練という形で免許を持った人が希望してここに集まって、社会に出てからすぐに美容師として働けるように訓練を行っているのですが、この集合訓練が立ち上がったことが私にとってはすごく嬉しいことなんです。
白百合美容室内に設置されているJHD&Cのパンフレット
ヘアドネーションの仕分け作業を白百合美容室でさせていただけるということで、関わる受刑者にパンフレットを見せたり説明をしたりしたところ、「ウィッグを子どもさんに無償で渡すんですね、私ぜひやりたいです。そういうことに賛同できて、自分が作業をさせてもらえるのがすごく嬉しい」とやる気になってくれているので、ご依頼いただき、ジャーダックさんには本当にありがたく思っています。
自分がどこまでできるかわからないですけれども、続けていけたらなって思っています。
「二度と刑務所に来てほしくない思いが根底にある」
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福田:
私は刑務官として19年目なのですが、そのうちほとんどが企画の仕事なんです。本来は保安警備などが業務の中心になる中で、こうして外部の方とお話しできたり、いろんな企画に携わらせていただけたりすることが非常にありがたいと思っています。
刑務官や刑務所のイメージって、すごく暗いんですよ。そんな中でも、最前線の職員はすごく頑張っているんです。心ない言葉を平気でかけてくる受刑者もいるんですが、刑務官はみんな、厳しい言い方もするけれども、二度と刑務所に来てほしくないんだっていう気持ちが根底にあります。
そういう思いを持って最前線の職員は取り組んでいることを知ってほしいですし、今はこういう企画を通じて再犯防止の取り組みをしているという実情を、これまでまったく刑務所と縁のなかった方にも知っていただけるような企画に携われることが、私にとってやりがいになっていると思います。
改善更生や受刑者の社会復帰の裏側には、刑務官はじめいろんな方が携わって初めて社会復帰できている、支援しているというところを見てほしいですし、その一助ができたらなと、そう考えています。
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今西:
福田さんがおっしゃったように、再犯防止のためにいろんな人がいろんな形でいろんな取り組みをしていて、それは「和歌山刑務所の刑務官」という一括りで語れることではないんだなと思います。ジャーダックが「NPOだからいい人」みたいなイメージで括られたり、社協さんが「公のお役所みたいな組織」というイメージで語られるけれども、実際にはいろんな人がいらっしゃいますよね。結局、偏見を捨てて1人の人間として評価するところから全部始まるのかなって、お話を伺っていて改めて思いました。
「挑戦的な新しい取り組みなんです」
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渡辺:
ジャーダックの活動開始から12年目ですが、この取り組みは初めての挑戦です。これまで髪は必ずジャーダックの事務局に届いて仕分けていましたから。ジャーダックが一番、新しいことが始まるなとドキドキしています。しかも和歌山刑務所さんとですから。
僕は将来性を感じています。この取り組みに、世間がどんな反応をするか楽しみに思っています。
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今西:
後から振り返ったときに、あれが多分ターニングポイントだったなって思えるようになっているといいですね。
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渡辺:
新しい、次の段階にシフトしたような、そういう手応えは感じています。
そうでなければ、この取り組みの許可を取るどこかの段階で「NO」と言われていると思うんですよ。世の中が変わってきていることの表れなんじゃないかと思います。今後この取り組みがどのように進んでいくのか、ぜひ活動に関心を寄せてくれる皆さんにも期待を込めて見守っていただきたいと思います。
みなさん、本日は本当にありがとうございました!
和歌山刑務所のキャラクター「ワカピー」、職員の皆さんと記念撮影
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